『こゝろ』- 2. あらすじ、3. 表現の深さ

夏目漱石の『こゝろ』、大人の読書感想文。

1. なぜ漱石か
2. あらすじ
3. 表現の深さ
4. 暗さの起因
5. 自由という不自由
6. 情報過多の時代
7. されど……

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2. あらすじ

まずは、あらすじを紹介。
『こゝろ』は、三部構成の形をとっている。

「上 先生と私」では、「私」と「先生」との出会いから始まる。
「先生」と呼ぶその人物のもとへ、「私」は足しげく通うも、「先生」は開襟を開くことはない。
内に秘めた過去をかかえつつ生きている「先生」の姿に、「私」はひかれていく。

「中 両親と私」では、「私」が病床の父のもとに帰郷する内容。
帰郷している間も、「私」は「先生」のことが気になってしかたがない。
そこへ、「先生」から一通のぶ厚い封書が届く。それは、「先生」の遺書だった。

「下 先生と遺書」
この物語の半分を占めるのが、この「先生」の遺書の部分。
そこには「先生」の秘めていた過去の全てが書かれていた、そして、この手紙が届くころには自分は生きていないだろう、と。

3. 表現の深さ

まず、「私」と「先生」の出会い。
人の多い海水浴場で「先生」を見た「私」は、
その後「先生」のいそうな時間を狙い定めて何度も足しげく海に通う。

その近づきかたや執着ぶりは、現代人のわたしにはストーカーかと思うほど、異様に感じた。
もちろん「私」も「先生」も男ですよ。

まぁしかし、ここで「先生」と近づかなければ話も進まない。
よって、ここは脳内変換。ラブストーリーに置きかえて読んでみた。

ラブストーリーにおきかえると、まぁ、なんということでしょう。
「先生」の姿が際立ってきた。何としてでも近づきたいと思わせるほどに。
表現の細やかさが、微に入り細に入っているゆえ、
簡単には自分の内側に踏み込ませない「先生」の態度に、じらされつつも焦がれているわたしがいました。

表現の細やかさ、見えそうで見えない「先生」の過去の描き方。
なるほど、よい表現、深い表現とはこういうものでありますか。

漱石さん、さすがです。

つづく……
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by e-sakamichi | 2016-08-19 13:06 | 本 & ひとりごと | Comments(0)

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