はじまりは鬼、おわりは賢治
2017年 12月 08日
読書記録。
鬼の話は、相変わらず継続中。
一筋縄でいくテーマではありませんでした。
あちらを読んでは行き詰り、こちらを読んでは結びつき。一進一退を繰り返しております。
鬼のテーマを追っていく中で頻出したのが、古事記と日本書紀。
ということで、まずは古事記から読んでみようと思います。
古事記は一度読んだだけで理解できるものではない。ゆえに、繰りかえし読む必要がある継続の書。よってこれも気長に付き合っていきたいとおもいます。
まずはその入り口としてまんがから。
絵がかわいくて、するっと読める。
するっと読めるだけに、わかった気になってわかってないんだろうな(笑)。
そんな中で、気がついたことが一つ。
スサノオが大暴れをする様が、火山の噴火に似ている。
……ということに気がついたのですが、そのときはそれ以上考えることもせず。
ところが、先月図書館に行って何気なく見ていた新書コーナーで、こんな本に出合いました。
『火山で読み解く古事記の謎』、タイトルずばり。
この本で、スサノオ大暴れのくだりは、やはり火山の噴火だと。
しかも、スサノオ大暴れをみたアマテラスが岩屋に隠れる「岩戸がくれ」は、火山灰による太陽光遮断だと。
あー、そこには思い至らなかった。くやしいー、けど、嬉しいー(笑)。
でも、この説は、古事記の解釈としてはマイナーなんだって。ふむふむ。
で、この説を提唱した一人が、なんと寺田寅彦なんだと。
寺田寅彦は、物理学者で、夏目漱石の教え子。
ゆえに、夏目漱石がらみでよく名前を見ていた。
それだけでなく、あちこちでこの方の名前があがってくる。
p94「私の乱読
文学のおもしろさはウェットだが、このエッセイ(註:寺田寅彦の)のおもしろさは、どこかドライなおもしろさであると感じた。」
そして、外山さんは「寺田寅彦のエッセイは、近代日本の示した最高の理性」とも評していた。
外山さんがそう評するからには、一度は読みたい思っていたところ。
上の古事記の本で寺田寅彦の名前が挙がったときに、これは読みどきだと思いさっそく。
『火山で読み解く古事記の謎』に引用されていた寺田寅彦の「神話と地球物理学」。
たったの5ページ、予想していたより短くて驚いた。しかし、内容はギッシリ。密度が違う。
他の文章も読んでみたけど、どれをとっても論理的。
「日本人の自然観」という随筆は、”そもそもこのお題の定義は”、という点だけで 3ページ弱(笑)。そこからようやく本題に入る。そういう理屈っぽい点が好き。
そして、語彙の豊かさとその選び方がすごい。どうすごいか説明できないのが歯がゆいけど、夏目漱石の『草枕』のような文章です。
短い文章の中にぎっしり情報が入っている。
その情報をどれだけ自分がくみとれるか、最初は自信がなかったけど、思いのほか大丈夫だった。前後に説明があるから。
p264「日本人の自然観」
「温帯における季節の交代、天気の変化は人間の智恵を養成する。
週期的あるいは非週期的に複雑な変化の相貌を現わす環境に適応するためには、人間は不断の注意と多様な工夫を要求されるからである。」
上の文章など、一見難しく感じるけど、前後の文章を読めば理解できる範疇でした。
しかし、なかには専門書向けに書いた随筆もあり、数式や定理が出てくるとわたしはついていけなかった(苦笑)。
そういうのは飛ばして読みますが、この方のすごいところは、物理学の考えをほかの分野にも適用した点。
例えば、「言語変化の規則性とそれによって推定しうる言語伝播に関する理論」に、物質分子の拡散と放射性物質の自然崩壊の考えを適用して数式で示している(らしい)。
わたしのような物理からっきしダメな人にはちと難しいけど、物理やってた人には更に興味深いことかと思われます。
『火山で読み解く古事記の謎』と寺田寅彦の件を、石ころの先生に話したら、「宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』を読んでみたら」とのこと。
火山が出てくるそうです。今から読みます。
ちなみに、ただいまムスメたちが宮沢賢治を習っている。自然好きな担任の先生も、『グスコーブドリの伝記』をすすめていたらしい。ますます読まねば(笑)。
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えーっと、もとの話はなんだっけ?
そうだ、鬼だった。それが、つながってつながってーで、宮沢賢治にいっちゃった。
まるで、散歩にでて、お隣のお隣~といっちゃって、気がつけば迷子になってしまった猫のよう。とほほ。
ということで
ただでさえ難解な鬼の話が、なかなかまとまらないのはこういう訳なのでした。
でも、いろんな背景を知らないと鬼の話は理解できないので、こういう寄り道も無駄ではないのでした。(←絶賛言い訳中)
(写真はフリー画像よりいただきました)
by e-sakamichi
| 2017-12-08 02:00
| 本 & ひとりごと
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