『石の来歴』- 1 / 序論

自分の夏休みの宿題、大人の読書感想文。

今年は奥泉光の『石の来歴』について書きました。

長いです、堅いです(笑)。

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石の来歴

奥泉 光/文藝春秋

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1.序論


世の中には二種類の人間が存在する。


石に興味のある人間と、興味のない人間だ。


興味のない人間にとって、石はただの石でしかなく、風景でしかない。いや風景にもなりえない、目にも止まらない存在でしかない。


「ただ意味もなく山河野原に散らばっているもので、邪魔にこそなれわざわざ手にとって眺めてみる価値などない」と考えているだろう。


しかし、石に興味のある人間にしてみれば、「河原の石ひとつにも宇宙の全過程が刻印されている」のである。


 この「河原の石ひとつにも宇宙の全工程が刻印されている」の一文は、石好きならどこかで一度は見かけたことのある文章であろう。


石が好き、というと、なんて地味な趣味だ、たかが石ころのどこにそんな魅力があるのか、といぶかしがられること度々な石好きな人々にとって、石の魅力を語るのにこれほどの名文はない。「石は宇宙とつながってるんだぜ。ロマンだろ」と鼻高々に公言できるのである。


しかもこの一文が、芥川賞を受賞した作品の冒頭の文章となれば、なおさら鼻高々に語れるのである。


裏を返せば、こういう名文を後ろ盾にしないと認知されないほど、石好きというのは肩身が狭い。もちろん私もその一人。


という石好きにとっては名文中の名文で始まる『石の来歴』を、今年の読書感想文に選ぶことにした。


まずは図書館で本を検索。そこで驚いたのが、この物語が「戦争文学」というジャンルであったことだった。石好きの変人の話(石好きは変だと認めているのか、わたし)だと勝手に思っていたので、戦争と繋がるとは全くの予想外だった。



(続きます)

by e-sakamichi | 2017-08-12 02:00 | 本 & ひとりごと | Comments(0)

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